北陸新幹線を考える(2)米原ルートがダメな理由

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北陸新幹線の敦賀から先の延伸をめぐり、石川県議会が20日、「米原ルート」に考え直すよう国に求める決議案を可決しました。石川県内では早く大阪までつながってほしいという思いから、これまでも小松市の宮橋市長ら複数の市長から、米原ルートへの転換を求める声が上がっていましたが、県議会の議決となると、重みが違います。


決議に至った最大の理由は、現状の「小浜ルート」では着工時期が見通せないから。着工には環境に影響を及ぼさないか調査や評価などを行う「環境アセスメント」という手続きが必要ですが、京都の地元住民への説明会などに時間が掛かっており、建設費も今年度の予算に盛り込まれておらず、着工の目途は立っていません。決議文では、小浜ルートの建設費は当時2.1兆円から資材などの高騰で今や4兆円とされる、京都府民の理解を得ることは至難の業などとして「米原ルートに考え直すよう強く求める」としています。


この動きを察したからか、与党の整備委員会が決議に先立つ18日、米原ルートの議論を否定、小浜ルートで延伸することを改めて確認。国土交通省も19日、ルートに関する資料をインターネット上に公開し、米原ルートは、東海道新幹線の運行の逼迫を招くこと、北陸新幹線で導入されている運行管理システムや設備と異なるため米原からの乗り入れは困難、など、米原ルートを断念した経緯を改めて伝える動きを見せています。


小浜ルートの着工時期が見通せないことへの苛立ち、それはよく解ります。私も、その一人です。しかし、敦賀からの距離が近く(約50キロ)、建設費も3分の1とされた「米原ルート」が“選ばれなかった理由”を精査しないで物を語っても始まらないと思うのです。


では、米原ルートにはどんな障害があったのか。最大の理由は、滋賀県が反対していること、次いでJR西日本がまったく乗り気でないこと、があります。米原ルートを叫ぶのであれば、その障害を取り除く方策も、同時に提示してもらいたいのです。


滋賀県が反対する理由は、いくつもあります。

(1)敦賀から米原までの距離が近く、滋賀県の中に駅を作るのが難しいこと、まずそれがあります。米原近くで大きな駅は長浜で観光地としても賑わっていますが、その距離7.7キロしかありません。米原を出て加速を始めたらすぐ減速して長浜に到着という距離に駅を作るわけにもいきません。

(2)それなのに、県内に駅が出来ないのに、滋賀県は想定建設費5,900億円のおよそ3分の1を負担しなければなりません。

(3)新幹線の開通に伴い、敦賀〜米原間の並行在来線は、ハピラインふくいのような地元自治体が運営する鉄道会社に移管されます。これも赤字必至で、地元自治体に負担が重くのし掛かります。


一方、JR西日本がまったく乗り気でないことにも理由があります。

(1)米原から先、東海道新幹線にどうやって乗り入れるのか、その解決が難しいこと。乗り入れるということになれば、どういうアプローチで線路を繋ぐのか。現行の米原駅のホームに停まらないといけませんから、上りと下りともに米原駅周辺で巨大なループを作って線路を合流させないといけません。駅周辺にまだ土地があるとはいえ、そのスペースがあるとは思えません。

(2)それが可能だったとしましょう。次はダイヤの問題です。東海道新幹線は世界一の密度で列車が行き交っている路線です。その隙間に北陸新幹線をどうやって割り込ませるのか。リニアで東京と新大坂が結ばれると、線路容量に余裕が出ると言われますが、それがいつになるのか。それを待っていると、小浜ルートの建設の方が先になる可能性もあります。

(3)また、線路の幅こそ同じですが、乗り入れるということになれば、信号システムなどをJR東海の規格に合わせる必要があります。その改造費用も膨大です。

(4)そして、最大の問題は、関西方面に向かう人の運賃収入がJR西日本が入って来ない、という問題です。JR東海に線路使用料を払って運賃収入はJR西日本がもらう、という建て付けも出来るでしょうが、その差額が(JR西日本の儲けが)どれくらいになるのか、JR西日本としては自前の線路でお客さんを運びたいわけで。


このうち、(4)については先月、加賀市の宮元市長が大胆な発言をしました。リニア中央新幹線の開通を前提に「米原から新大阪までの区間をJR東海からJR西日本に移管すべき」と。「JR東海が乗り入れている米原から大阪の路線は、譲渡か移管すればよい。JR東海は既にリニアの計画に入っているし、収益の高い会社なので。そこは国が調整・支援して、JR西も納得できるように。日本が今、衰退している状況はそういうところだと思う。政治が判断できない、リーダーシップがない」。


ただ、それで問題が解決しないことは、上に述べた通りです。(4)以外の障害がなくなるわけではありません。


そこに飛び込んで来たのが、交通経済学を専門とする同志社大学の青木真美名誉教授のインタビュー記事です。なんと、計画当初に予定されていた「亀岡ルート」の復活です。6月16日付けの京都新聞社に掲載されたものですが、京都市内の大深度地下を掘り進めて、京都駅に乗り入れる現行の小浜ルートは費用の増大が見込まれるとし、京都駅に接続せず、京都府亀岡市を通って新大阪へと繋げた方が「安く、問題が少なくできる」と提言しています。


教授は米原ルートについても「自然への影響や騒音問題、琵琶湖の景観問題が出てくる。本当に安上がりなのか。(雪などもあり)思うように運行できるのか。米原は安上がりだという考えで論じられているが、実際に米原のどこを通すのか。琵琶湖周辺は平地がある訳ではない。米原も簡単ではない」と述べています。


JR西日本は、北陸新幹線の新大阪延伸時には、湖西線を並行在来線であるとして経営分離し、敦賀〜京都〜大阪を走る特急「サンダーバード」を廃止する方針です。そうなると、さらに京都駅は遠くなりにけり、ということにもなりますが、その京都駅に繋げるための工事が、地元の反対や工事の難しさに直面しているわけですから、改めて浮上してきたこの亀岡ルート、建設費、工事の進捗という意味で、検討の余地はあると思います。亀岡〜京都間は快速で約20分です。



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