鯖江の「寿大学」で朝鮮半島情勢を解説

3日は鯖江市の年金受給者の会が行っている「寿大学」で、朝鮮半島情勢について話をしてきました。講演の依頼がきた時点では、憲法改正問題がようやく動き出そうとしていたので、当初は「憲法改正の行方」というお題で話をするつもりでした。ところが、状況はまったく動かず。それを尻目に、朝鮮半島情勢は6月12日、米国のドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長による米朝首脳会談が実現して激変しました。そこで急きょ、テーマを変えて話をしてきました。

今回の米朝の首脳による直接会談で、わずか半年前まで「ロケットマン」、「狂った老いぼれ」という激しい言葉で罵り合っていた二人が向かい合い、握手し、包括的な合意文書にまで署名しました。その意味では、まさに歴史的な首脳会談と言ってもいいでしょう。しかし、朝鮮半島情勢の転換点になるかというと、その先が見通せません。というのも、今回の合意、よくみると、具体的なことがほとんど書かれていないからです。

合意に書き込まれたことは、以下の4点です。◉米朝の両国民が平和と繁栄を望んでいることに従って、新しい米朝関係を構築する。◉朝鮮半島に永続的で安定的な平和体制を構築するためともに努力する。◉北朝鮮が朝鮮半島を完全に非核化するために取り組むとした、4月27日の板門店宣言を再確認する。◉米朝は既に身元確認されたものを含め、戦争捕虜(POW)や行方不明兵の遺骨の回収に尽力する、です。

そこから読み取れるのは、以下のようなことです。◉トランプ大統領が北朝鮮に安全の保証を与えることを約束した。◉金委員長は朝鮮半島の完全な非核化に対する確固とした不動の意志を再確認した。◉相互信頼の構築が朝鮮半島の非核化の促進を可能にするという認識の下、北朝鮮は「朝鮮半島の完全な非核化」に向けて努力することを約束した、といったことです。

そのあたりをどう考えるか…。「完全な非核化」に言及しつつも、「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化=CVID」という文言は声明には明記されず、非核化に向けたロードマップや期限についても触れられませんでした。その意味で、核問題をめぐって、過去に北朝鮮が国際社会と交わした諸合意と比べても、具体性に欠け、なんとも抽象的としか言いようがありません。

また、今回の首脳会談では、「完全な非核化」の問題と並び、朝鮮戦争の終結(実は停戦協定しか結ばれたまま軍が対峙している状況がいまも続いている)、敵対関係の清算がどうなるか、にも注目が集まっていました。しかし、それについての言及はありませんでした。それらを綜合して考えると、今回の合意は、二人が◉まずは両国関係を転換させ、◉両首脳の信頼関係から構築していく、そのプロセスの始まりを確認した合意、とみる方が正確でしょう。やや肩すかしの内容です。故に北朝鮮は万々歳でしょう。締め切りのない宿題を与えられた、とも言えるからです。

ただ、そんな内容でも、その程度の中身でも、「戦後初の首脳会談が行われた」という事実は残り、遅々とした動きでも「やってる感」さえ演出できれば、トランプ大統領は11月の中間選挙に向け、その「成果」を使い倒すでしょう。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領も、朝鮮半島に恒久的平和体制を構築するため、米朝、南北関係のバランスを保ちながら主導的役割を果たすことで外交力をアピールできます。中国は北の後ろ盾としての存在感を増し、ロシアも動きが出るたびに「朝鮮半島の今後」に絡めるチャンスがもらえることになりました。日本だけが“宗主国・米国”に頭を押さえつけられて独自色を発揮できないわけですが、今回の首脳会談は日本以外の誰もが「損をしない」ところに特徴があります。

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