連載 | 女性宮家が駄目なわけ 4


第4回 … なぜ、「男系継承」を続けてきたのか

では、なぜ、男系継承を続けてきたのか。それもこれも、現世の権力者の「胤」を皇統に入れないため、皇統を外の「胤」に乗っ取られないための知恵です。このルールがあるからこそ、平清盛も、足利義満も、織田信長も、徳川家康も、自分の「胤」を皇統に入れることが出来なかったわけです。「皇統はあくまでも天皇の胤を受け継いだ単独の系譜として存在する」ことで、権力は時の権力者に、権威は天皇に、という二元制が担保され、時の権力から一定の距離を置いているからこそ、権力の毀誉褒貶に巻き込まれることなく、権勢の盛衰と共倒れすることなく、尊敬を集めてきたわけです。「男系継承」はそのことを担保してきた、日本人が生み出した素晴らしい知恵なのです。

これが一般人のような、「血」を継ぐだけの「女系継承」ならどうなるでしょう。権力者が女性皇族との間に男子を設ければ、その男子は皇位継承者の資格を持ちます。その男子が即位すれば、皇統の「胤」はそこから変わってしまいます。そして、権力者が変わるごとにそれが繰り返されるのです。つまり、皇統が時の権力者の動向に振り回される、ということです。

例えば、清盛は天皇家と姻戚関係を結ぶため、娘・徳子を時の高倉天皇に嫁がせました。二人の間に誕生したのが、有名な安徳天皇です。一般的な感覚から見ると、清盛は「血のレベル」では天皇と繋がり、天皇の「爺ちゃん」になります。しかし、皇統が「男系継承」である限り、清盛はそこまでしか皇統に近付けないのです。なぜなら、繰り返しになりますが、神武天皇の以来の「胤」を受け継いだ男子以外、皇族にはなれないからです。だからこそ、娘を通して、せめて「血のレベル」での繋がりを持とうとするわけです。

それだけの歴史を重ねてきた「男系継承」はいま、厳しい現実に直面しています。「胤」を繋いでいくために大きな役割を果たしてきた側室制度が廃止され、皇族も一夫一婦制となったからです。このままいけば、皇族はやがて悠仁親王一人になってしまう、それが現実です。では、我々は、これまで続いてきた素晴らしい知恵をどうやって維持していけば良いのか。答えは明らかで、これまでの歴史を踏まえて考えれば、旧皇族の復帰こそが抜本的な解決策です。

敗戦で日本は戦後しばらく、「GHQ=連合国軍総司令部」の占領下に置かれました。その「GHQ」の一方的な命令で、戦前は皇族だった11もの宮家が皇籍離脱を余儀なくされました=図4参照。「GHQ」は占領政策をスムーズに進めるため当面は天皇の権威を借りる一方、皇族を、本来ならば皇統の森の一部を担っている人たちを減らすことでやがて皇統を“自然死”させることを狙ったのです。敗戦のため、皇統の森が「GHQ」に強制的に“伐採”されてしまったという言い方もできます。しかも、減らされた方が多いのです。見方を変えれば、戦後の皇統は「片肺飛行」を余儀なくされているのです。だから、彼らに皇族に復帰してもらって森を本来の形に戻せば良いのです。何のことはない、自分のじいちゃんの世代では皇族だった人たちから「胤」を継いでいる人たちに皇族に復帰してもらうだけの簡単な話です。

図4(拡大)
宮家の森

そういうと、反対の人はよくこういいます。「70年も皇族でなかった人をいまさらなぜ。国民はピンと来ない」。しかし、顔を知らない、人となりを知らないという意味では、女性皇族の夫となる男子とて同じことでしょう。反対している人は、自分が言っていることが矛盾していることに気付いていないのです。どちらも知らない人なら、旧皇族の男子の方が、これまでのルールを壊す必要がない分、良くないですか?、と訊いてみたくなります。

復帰といっても、家族全員を復帰させる必要はありません。「皇室典範」を改正して、「宮家が旧皇族の男子に限って養子にすることを認める」と書き込めば良いのです。そうすれば、現在は女性皇族だけで、やがて廃絶となる三笠宮や高円宮家も男子の後継者を得て存続が可能になります。そして、そうすることがとりもなおさず、皇位継承者を増やし、皇統の安定に繋がるのですから。

皇位継承の問題をめぐり、「いま風のやり方で」、「現代社会に適合したやり方で」という声を耳にします。しかし、それでは、自分が生きている短い時間の中で主流になっている価値観で刹那的に物事を決めるだけに終わります。過去の歴史を知り、将来への想いを馳せ、自分は所詮その途中にちょっと存在しているだけという自覚を持ち、「歴史に生きる」という感覚でこの問題は考えないといけません。現代の、しかも戦後の家族感に縛られてしまって、皇位継承の問題を「今上陛下のファミリーの問題」と矮小化してしまってはいけません。あくまでも皇統全体の問題として考える視点こそ必要です。

「女性宮家」創設といった浅はかな提案に対して、政府は安定的な皇位継承に繋がる旧皇族の復帰を対峙させ、その可能性をとことん模索すべきです。歴史の浅い他宗教の王朝の例を引いたり、たかだかこの70年ほどの価値観で、過去例外なく続いてきた「男系継承」を捨てることは暴挙です。


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コメント

  1. Chi より:

    大変分かりやすいです。
    ありがとう御座います。