連載 | 女性宮家が駄目なわけ 1


第1回 … 「血」ではなく、「胤」を嗣いでいるから天皇

一般の社会では、息子が居ない時は、娘に婿を迎えて家を存続させます。娘と婿の間に生まれてくる孫には、娘を通じて、自分たちの血が流れている、だから、「血」は繋がると考えるからですね。その感覚があるため、皇位の継承においても、新天皇(現在の皇太子殿下)の次は、その娘である愛子さまに婿をもらって家を継いでもらう手もあるのでは?、と考える人が出てくるのも解ります。しかし、皇統(皇族の系譜)を貫いてきた「男系継承=父系継承」というルールでは、それはありえない話なのです。

なぜか。それは皇統が「血を受け継ぐ」スタイルで繋がっているのではなく、「初代天皇の胤を受け継ぐ」スタイルで繋がってきているからです。そして、そのスタイルが「男系継承=父系継承」ということの中身なのです。そのルールが解れば、外の「胤」が入ってくる「婿を迎える」ことが駄目で、婿を迎えて創設される「女性宮家」に反対する人が多い理由も、すんなり腑に落ちるはずです。また、皇室をめぐる話はもちろん、これまでの皇位継承(天皇位の継承)の流れもぐっとシンプルに見えるようになります。そして、あなたにとっての「天皇制」も、見え方が変わってくるはずです。

平成天皇の譲位によって皇太子殿下が即位されると、皇位継承順位第1位は秋篠宮殿下となります。「胤を受け継いでいる者」の中で、秋篠宮殿下が天皇に最も近い存在だからです。第2位は、秋篠宮殿下を通じて「胤を受け継いでいる」悠仁(ひさひと)親王、第3位は昭和天皇を通じて「胤を受け継いでいる」常陸宮殿下という順番になります。そういう継承順位になるのも、この「男系継承」のルールに則っているからです=図1参照


図1(拡大)


では、「胤」とは具体的に何を指すのでしょう。医学的な話では、男性は「XY」、女性は「XX」という染色体を持っているとされています。子供は親からその染色体を受け継ぐわけですが、男子と女子では、受け継ぐそれが違うのです。動物的な仕組みが違うのですから、そうなるのも仕方ありません。では、どう違うのか。男子は父親から「Y」を、母親からは「X」を受け継ぎますが、女子は父親と母親双方から「X」を引き継ぐといわれています。つまり、こと父親の「Y」は男子にしか受け継がれないのです。ですから、「胤」の正体を医学的にいうと、この「Y」染色体ということになりますね。そこで昔は正室(=本妻)の他に側室を置いたりして、「Y」のコピーをたくさん作りました。

明治天皇には15人の子供がいましたが、皇后(昭憲皇太后=しょうけん・こうたいごう)との間に子供が出来ませんでした。つまり、すべての子供が側室との間の子供、というわけです。側室という存在がいかに重要な役割を果たしてきたか、それがよく解ります。今上陛下は125代ですから、皇位の継承はこれまで124回ありましたが、そのうち、天皇と皇后との間に生まれた子供による継承は41回。これに対して、天皇と皇后以外の女性(=側室)との間に生まれた子供による継承は、皇位継承のほぼ半分を占めます。

徳川幕府もまたしかり。始祖の徳川家康の「胤」を引き継いでいくことが至上命題。「大奥」を作ったのも、きちんとコントロールしながら「胤」を繋いでいくためですね。教科書に出てきた「御三家」の存在も、将軍家以外の別ルートでその「胤」を温存し、引き継いでいくための知恵です。というと、権力者たちの間のシステム、と思われがちですが、「胤」を継ぐという考え方は、もっと身近な話です。

例えば、学校でイスラム社会では夫人が4人まで持てる、と習った覚えはありませんか? それも「胤」を引き継ぐための知恵。日本では婿をもらうことが一般化しているので、婿が自分の姓を嫁ぎ先の姓に変えることに(いわゆる「入り婿」ですね!)あまり疑問に感じませんが、世界的にはそちらの方が少数派。中国や朝鮮半島も、夫婦の間に生まれた子女はすべて父親の姓を受け継ぎます。それもこれも、父親の「胤」が王なのか、陳なのか、李なのか、金なのか、どの「胤」を受け継いでいるのか「表示」しているのです。これも近親交配を防ぐための知恵。言われてみれば、「なるほどー」ということが皆さんの周りにもあるはずです。

余談になりますが、夫婦別姓をめぐる議論の中で、中国や朝鮮半島では結婚しても奥さんが姓を変えないことを、女性が自立している「証拠」として、日本よりも開明的と持ち上げるあげる人がいます。これはとんでもない勘違いです。これまで話してきた「胤」の継承の仕組みの上でそうなっているわけで、女性の自立うんぬんの話ではないのです。



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